Killzone」のディベロッパー、Guerrillaのサウンドデザイナー、ジョリス・デ・マン氏のインタビュー

ドルビー: ゲームのオーディオ制作を手がけるようになったいきさつは? 元々はどのような経歴でしたか?

ジョリス・デ・マン氏: 最初はAtariのデモシーン制作から始めて、「Scavenger」という名前でチップミュージックを作曲していました。 当時は音楽を仕事にしようという気持ちはなく、芸術大学に入ろうと思っていました。 大学に2回落ちた後、ハーグ王立音楽院で教えている父が、いつも僕がせっせとサウンドや音楽を作っているので音響学の講座を受けたらどうかと言いました。 1年の受講後、ヒルバーサムのHKU(ユトレヒト芸術大学)に入学しました。 その頃にはもう、フリーランスの仕事をいくつかやっていて、オランダでCD-iゲームの音楽を作曲していました。大学に6ヶ月通った後、学校より仕事をやろうと決めました!

1年後にはBitmap Brothersに雇われて、その後3年間はロンドンでサウンドデザイナー兼ゲームコンポーザーとして働いていました。 ゲーム業界は好きでしたが、ちょっと故郷が恋しくなってオランダに戻りました。 うまい具合に、ちょうど新しいゲーム会社の立ち上げをしているところでした。危なっかしいスタートを切った後、それがGuerrillaになったのです。 僕たちはソニーと独占契約を結んで、「Killzone™」の仕事を始めました。 その後のことは、よく言われるように歴史というやつです。

ドルビー: サラウンドサウンドを手がける前にオーディオを制作した最初のゲームは?

デ・マン氏:Dimo's Quest」という低予算のCD-iゲームでした。 あまり売れなかったのですが、スタートとしては好調で、ドアに足を入れることができました。

ドルビー: ゲームでサラウンドサウンドを使ってみたいと思った理由は?

デ・マン氏: ずっと前から3Dサウンドと音響心理学に関心がありました。 サラウンドが主流になる前から、すでにQSoundやローランドのRSSのような機器を使って実験をして、より大きく、より幅広く音の出るミックスを作ろうとしていました。 こういうテクニックは基本的に、自分の背後や上部で聞こえる音をシミュレートしようとするものですが、当時はまだスピーカー2本(またはヘッドフォン)でやっていました。 それなりにできましたが、現在のような真のサラウンドシステムとは全然違います。

ドルビー: サラウンドサウンドミックスを制作した初めてのゲームは?

デ・マン氏: おもしろいことに「Killzone」です。 SDK(ソフトウェア開発キット)を送ってもらった数日のうちに実装したのですが、ドルビーはとても良く、あまりの違いに驚きました。 そのほかにも、サラウンドセットアップを送ってくれて、すぐに試すことができるようにしてくれました。 そのすぐ後に、僕たちにインゲームだけでなく、カットシーンや楽曲のミックスもすべての作業をまかせるという決定がなされました。

ドルビー: これまでに制作したゲームの中でオーディオの面で最も気に入っている作品は?

デ・マン氏: これも「Killzone」です。 まさに夢が現実になったプロジェクトでした。 ビジュアルデザインが非常に力強くて、未来的だけれどSFっぽい感じではなく、非常に骨太で鋭さがあふれています。 ゲームの中では、戦闘場面、耳元をかすめる弾丸のうなり、遠くの叫び声、爆音など、臨場感あふれるサウンドでプレーヤーを包み込みたいと思いました。ドルビー®プロロジック®IIは、それを実現するには最適でした。 事前にミックスした環境音をエンコードし、それをQuadでプロロジックIIにミックスしてバックグラウンド環境音としました。また、ゲームの効果音自体はリアルタイムに生成され、ドルビーSDKによって定位されます。 これら2種類のサウンドが、きわめて没入感の高い体験をもたらすのです。

ドルビー:Killzone」におけるオーディオの重要性を説明してくれますか?

デ・マン氏: オーディオは、プレーヤーにとって誰がどこから撃ってきているかがわかる聴覚的なキューとして機能します。これは、サラウンドサウンドでなければもっと難しくなります。 話は変わりますが、サウンドトラックを演奏してもらうために2つのオーケストラと作業する機会がありました。大変素晴らしく、満足のいくものでした。 1つのオーケストラにはメインテーマ(何年か前、ソニーのピッチで僕たちが使ったもの)を演奏してもらい、もう1つには今年初めにすべてのカットシーンの楽曲を演奏してもらいました。

ゲームのサウンドの出来栄えについては、とても満足しています。 多くの武器が登場し、装弾には非常に詳細なアニメーションが使われているのですが、それがリアルなずっしりとした感じに聞こえるよう多くの時間を費やして作業しました。 また、「耳元をかすめる音」も作りました。小さな弾丸が通り過ぎる音ですが、サラウンドで見事に再現されています。 弾丸がプレーヤーの顔のそばを通るたびに、耳元をかすめて通る音が聞こえるのです。 これはプレーヤーにとって、「敵が近付いてきた!」という合図にもなります。

ドルビー: 初めてサラウンドでゲームを作ってから、技術の進歩はありましたか?

デ・マン氏: それはもちろん。 「Killzone」はドルビープロロジックIIに対応していますが、ドルビーデジタル5.1はそれより進んだフォーマットだということを知っています。ですから、次のゲームでは5.1に対応することを検討しています。

ドルビー: ゲームオーディオを制作するうえで欠かせない技術とは?

デ・マン氏: Pro Tools®、Nuendo、そして、ドルビーエンコーダーです! サラウンドは、非常に魅力的なフォーマットです。 一度サラウンドでミックスしたら、もう後には戻れません。

ドルビー: トラックの録音やゲームサウンドのミキシングをしている時、どのような問題に直面しますか?

デ・マン氏: ゲームサウンドに関する最大の問題は、それが非線形のフォーマットだということです。 何が起こるかを正確に予測することができません。事実上、プレーの過程でゲーム自身がサウンドをミックスするのであり、したがって個々のサウンドにいっそう注意を払う必要があります。 「Killzone」における最大の問題はメモリーです。PlayStation® 2のメモリー容量があまり多くないため、十分効果がある程度にスモールサウンドにすることで切り抜けました。

ドルビー: サウンドはゲームコミュニティにおいて十分重視されていると思いますか?

デ・マン氏: 最近は、間違いなくそうです。 「ピーッ、ピーッ」音の時代はとっくに終わり、ゲームの中で映画並みのクオリティのオーディオが聞けるということに、みんなやっと気づいたのだと思います。 サラウンドで、その流れがいっそう強まるでしょう。

ドルビー: オーディオにはどのような変化と進化が起きると思いますか? バックグラウンドミュージックや映画のサウンドトラックのような路線を取るのか、ゲームプレーの重要な部分を構成するようになるのか(たとえば、目に見えない敵を音だけで認識するなど)、あるいはその両方になるのか?

デ・マン氏: 両方だと思います。 ゲームの中で、たとえばインタラクティブミュージックに何ができるのか、その可能性の探求はまだまだこれからだと思います。 ハードウェアにしても日進月歩で、最初からあらゆる種類のサラウンドフォーマットに対応するようになっています。

取り組んでいるもののすごさを理解すると何がわかるかというと、普通ならミックスする際にオフラインでやる作業(リバーブ、フランジング/コーラスなどのエフェクト、ボイス加工)のもっと多くが、次世代のプラットフォームではリアルタイムで生成できるようになるだろうということです。

ドルビー: 現在やっている仕事は?

デ・マン氏: 現在は、次なる2つのGuerrillaプロジェクトの準備をしています。それから、あと少しで「Killzone」のリリースです!

ドルビー: ゲームオーディオにおける最大のイノベーションだと思うのは?

デ・マン氏: ステープラーです。

ドルビー: 個人的に目指す、次の方向性は? ゲームのためにどのようなオーディオを作りたいですか?

デ・マン氏: 僕は映画の大ファンで、ハリウッド作品が持つプロダクションとしての価値が本当に好きです。 ああいうクオリティをゲームでも作り出したいと思います。楽曲においてもサウンド全般においても、ああいう壮大なサウンドを。

当然ながら、そのような音づくりにとってサラウンドは重要な要素です。このフォーマットを使って、もっといろいろやってみたいと思っています。

ドルビー: お気に入りのゲームと音楽アルバムを3つ挙げるとしたら?

デ・マン氏: ゲームは、「Fallout」シリーズです。見事なサウンドと雰囲気を備えた、素晴らしいゲームです。 それから「Diablo® II」。このゲームは本当にやめられなくなるから、禁止するべきですよ。 「Soul Caliber® 2」は、これまでに作られた最高の戦闘ゲームの1つです。

音楽は、デペッシュ・モードの「Songs of Faith and Devotion」は、プロダクションが素晴らしい出来です。 あのアルバム以降のサウンドは、あれほど良くはありません。 ヴァンゲリスの「ブレードランナー」は、昔から好きなサウンドトラックで、MIDIやHD録音が登場するよりずっと前に作られたものです。 本当の傑作です…即、鳥肌が立ちます。 それから、エリオット・ゴールデンサルの「エイリアン3」は、あそこまで映画そのものよりすごいサウンドトラックというのは、滅多に聞いたことがありません。 サウンドトラックとはこうあるべきという枠をぶち破り、素晴らしい不協和音を使った前衛的な芸術作品です。

ドルビー: 18歳の時は何をしていました?

デ・マン氏: なんで芸術学校に入れないんだろうって悩んでいました!

ドルビー: クロコダイル・バーガーを食べたことは?

デ・マン氏: いえいえ。でも、カンガルー・バーガーなら一度食べたことがあるけれど、美味しかったですよ。 それも数に入る?

ドルビー: 楽器の演奏はされるのですか?

デ・マン氏: バイオリンを6年やりました。それからドラムを少々。キーボードも多少はわかるけれど、弾けるとは絶対言えません。 でも、小さなノーズフルートのソロ演奏はできますよ。誕生会やバルミツバーや結婚式に雇ってもらえるぐらいの腕前です。

ドルビー: なるほど…結婚する時は考えておきます。 「Killzone」のオーディオにまつわる面白い話はありますか?

デ・マン氏: 効果音を出すために使う物を探していて、ふと事務用ステープラーを使ってみたら、いい感じのメカニカルな音が出るんです。 Guerrillaの人たちは、僕がしょっちゅう建物の中をうろついては何かを弾いたり叩いたりして、サウンド的に使えないか試している姿を目にしていますよ。

とにかく、そのステープラーの音はグレネードランチャーの装弾音に使われることになりました。 オランダには武器に関する厳しい法律があって、本物の音を収録することはまず無理なのです。

いくつかの雑誌がこのネタを仕入れて、それ以来、ゲーム中の武器の音は全部、様々なステープラーで作ったものだなどと書いています!

ドルビー: それで、さっきステープラーと言ったわけがわかりました! 「Killzone」のオーディオチームは、何人ぐらいでしたか?

デ・マン氏: プロジェクトの最初の4分の3は、音楽と効果音の担当は僕だけでした。 でも、終わりのほうは相当忙しくなってきたので、同僚のナティ・ツァイテンシュタットに協力を求め、プロジェクトの追加的なサウンドデザインを担当してもらいました。 また、インターンを使って、無数にあるインゲームボイスの編集を手伝ってもらいました。

ドルビー:Killzone」の音楽を本物のオーケストラが演奏したということに、音楽への思い入れがはっきり感じられるのですが、ゲームの多くの場面では、むしろ音楽はその不在によって目立っています。そして、オーディオの世界には美しく作り込まれたサウンドスケープのみが存在し、ゲームの雰囲気をきわめてよく伝えています。 「Killzone」で、音楽を全面的に打ち出すかサウンドスケープだけかを決めた根拠は何ですか?

デ・マン氏: それは実際的な判断によるものです。ゲーム中は、プレーヤーが周囲の聴覚的キューに頼れるように、また戦闘の環境音に没入できるようにしたかったのです。 これらの音を質の高いものにするため、ディスクからストリームする必要がありました。「Killzone」の各レベルには4種類の異なる環境音を用意し、すべてプロロジックIIでミックスしました。 しかし、ゲームでは同時にレベルデータもストリームするため、音楽を入れる余地がなくなったのです。

その代わりに、ストーリーテリングの場面すなわちカットシーンとメニューでは音楽を使うことにしました。 いずれにせよ、一般的にゲームプレー中はあまり音楽を使いすぎないほうがいいと思います。プレーヤーの注意を散漫にするおそれがありますし、特に聴覚的キューに頼る必要がある時はなおさらです。

結局のところ、「いい音楽だったな、もっとあればよかったのに」と言われるほうが、オーディオオプションで音楽を消されるよりはましだと思います!

ドルビー:Killzone」のオーディオは、どのぐらいインタラクティブですか?

デ・マン氏: このゲームには、多くのインタラクティブな効果音が使われています。 僕たちはそれを「セットピース」と呼んでいますが、たとえば柱が崩れ落ちる音、ドロップシップが降下する音、建物が爆発する音などがあります。環境音はインタラクティブではありませんが、多くのことが起こっていますから、プレーヤーがそれに気づいたとしたらむしろ驚きです。

環境音は、マップ上の区域ごとにリンクされています。しかも、ダイナミックにクロスフェードするから、とてもいい感じです。

全体的に考えると、僕たちはPS2ハードウェアでかなりちゃんとしたオーディオを出せたと思います。

ドルビー: その点は同意せざるをえませんね! 次のプロジェクトの成功を祈ります!

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