メディアのライセンスと映画サウンド
メディアのライセンス
1970年にドルビーは、市販音楽カセットもドルビーBタイプ特性でエンコードすることで、ドルビーBタイプNR機能を備えたプレーヤーで聴いたとき低雑音を実現するという構想を推進しました。 英国のデッカと米国のアンペックスステレオテープなどいくつかのレコード会社でリスニングテストが実施されたところ、ドルビーBエンコードのテープはノイズリダクション機能のないプレーヤーで再生されたときにもエンコードされていないテープよりむしろ好まれることがわかり、エンコードされたものとエンコードされていないもの両方の形態でカセットを販売する必要はなくなりました。 その年の末に、これらの会社はドルビーラボラトリーズが作った業務用レベルの品質を持つBタイプエンコーダを使って最初のBタイプエンコードテープを発売しました(ドルビーは、ドルビー技術が組み込まれたエンコーダをレコード業界に供給し続け、品質基準を満たすライセンシーの民生用製品の性能が確かなものとなるよう努めています)。 その後数年のうちにほぼ全ての録音済みカセットがドルビーBタイプNRでエンコードされることになりました。
それは今日でも同様です。 実際、ドルビーBエンコードカセットは録音音楽分野においてこれまでで最も普及したものとなり、LPレコードの売上げを越え、1990年代初めにCDに追い越されるまで市場で高いシェアを占めていました。
ドルビーはレコード会社が録音済みテープにドルビー商標を使えるよう、商標と品質管理ライセンスを整備しました。 ドルビーBNRを標準民生用テープノイズリダクションシステムとして確立させ、ドルビーBNRを搭載したカセットレコーダーの販売を進めるために、このライセンスにはロイヤルティーは要求しませんでした。 この方針はドルビー技術で録音された全てのメディア、すなわち現在ではほぼ全てのオーディオカセット製品、さらにドルビーサラウンドまたはドルビーデジタルあるいはその両方でエンコードされた何千ものビデオカセット、レーザーディスク、ビデオゲーム、DVDにも適用されています。
現在のドルビーのライセンス
ドルビーのライセンス許諾活動は、サンフランシスコ本社の大勢のエンジニア、技師、知的財産専門家などによって進められています。 ドルビーの総合的なライセンス許諾プログラムには、何百もの製品およびソフトのサンプル認証試験、世界各地の民生用エレクトロニクス工場や設計センターの定期的な視察、ドルビー技術をICとして民生用製品に組み込むことに関するICメーカー支援などが含まれています。
アナログのノイズリダクションおよびホームシアターサラウンドサウンド技術に加えて、現在のライセンス技術には、 DVD、デジタル放送テレビ、デジタルケーブル、直接衛星放送(DSB)に使用されるマルチチャンネルデジタルサラウンドサウンドフォーマット、ドルビーデジタルなど、多くのデジタル技術があります。
ドルビーの映画サウンド研究
1960年代後半にBタイプNR技術が市場に導入され始めた頃には、ドルビーはすでにそのノイズリダクション技術に対して別の用途を見出そうと考えていました。 有望と考えられた領域は映画サウンドでした。 特にそれは1920年代の後半に導入された写真つまり"光学"サウンドトラックで、主にドルビーの努力により、これは今でも最も普及した映画サウンドトラックとなっています。
光学サウンドトラックには経済性、信頼性、比較的長いプリント寿命など多くの利点が見られます。 同様に重要なことは、光学サウンドの35ミリフィルムはまさにユニバーサルなメディアだということです。 たとえば米国で作られた映画が世界中の映画館で上映できるようになるのです。 しかしこのユニバーサルな特徴には欠点も見られます。
長らく音響装置の取り付けに必死になっていた映画館や急いで"トーキー"を映画製作に取り入れようとしていた映画製作者の問題を解決しようと、1930年代後半に映画産業は、現在"アカデミー"特性と呼ばれている標準化された映画再生特性を採用することにしました。 これにより世界のあらゆる映画館が、どんな映画でも適切なサウンドで上映できるような録音・再生システムを使用できるようになりました。 しかし、それは1930 年代の映画のサウンドより優れたサウンドには対応はできませんでした。 モデル364、ドルビーAタイプNRで録音されたモノ光学サウンドトラックをデコードする最初のドルビー映画サウンド用製品。 (1972年) 実際、1970年代に至るまで映画館での光学サウンド再生の周波数特性は、電話よりほんの少し良いといった程度のものでした。
ドルビーの調査によると、光学サウンドに見られたこれらの限界は大部分が大きなバックグラウンドノイズによるものとわかりました。 こうしたノイズを除去するために、映画館の再生システムの高周波数特性("アカデミー"特性)があえて抑えられていたのです。 さらに悪いことには、そのようなシステムでセリフを聴き取りやすくするために、サウンドミキサーが高い周波数のプリエンファシスでサウンドトラックを録音し、高い歪が発生していました。
遅いスタート
ドルビーはドルビーAタイプNRを光学サウンドトラックに適用すれば映画館でよりワイドな周波数特性が得られ、またミキサーが"よりフラットな"つまり歪の少ないサウンドトラックを録音できるのではないかと考えました。 この理論、つまり忠実度の高い光学サウンドを実現できる、という考え方はその後正しかったことが証明されました。
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ドルビーは映画館用のAタイプNR装置の開発を進めました。
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これはすでに映画館に装備されていたスピーカーの特性を広げる特殊イコライザーが組み込まれたものです。 サウンドトラックをAタイプでエンコードした映画のプリントの互換性がドルビーのデコーダが装備されていない映画館で試聴テストされ、その結果Bタイプのエンコードカセットと同様に、Aタイプエンコードサウンドトラックも許容できると判断されました。 そこでドルビーは1種類のリリースプリントだけを全ての映画館に使用すればよいとの論調で、映画産業に対してエンコードされた映画を作るようにと働きかけました。
しかしこの最初の映画サウンドに関する試みは大きな成功にはつながりませんでした。 忠実度にははっきりとした改善が見られましたが、光学サウンドは依然としてモノの状態でした。 この頃までには多くの家庭が優れたハイファイステレオシステムを所有するようになっていたので、映画館を訪れる人々の大部分は映画館で聴くサウンドより優れたサウンドを自分の家で聴くことに慣れていました。 1950年代以降、映画産業ではマルチチャンネルステレオサウンドを提供する別のサウンドトラック手段が使えるようになっていました。
この方法は仕上がったリリースプリントに細長い酸化鉄物質をストライプするもの(録音テープベースへの磁気コーティングと同様)です。 サウンドはリアルタイムで磁気のストライプ上に記録されます。 映画はテープレコーダーに似た磁気ヘッドの付いたプロジェクターで再生されます。
1950年代、多くの映画館には磁気サウンドが備わっていました。 しかし1970年代までには、磁気リリースプリントの高い価格(光学プリントの10倍以上)、その比較的短い寿命(光学プリントに比べて)、磁気再生ヘッドを維持するための高いコスト、と言ったことから磁気リリースの数が大幅に減り、これを再生することのできる映画館も大きく減りました。 磁気ステレオサウンドは毎年のベストセラー作品の最初のわずかな公開にだけ使われるものに留まりました。 ドルビーが映画館で使用されるようになったばかりの頃、映画を見に行く人たちに通常提供されていたのは忠実度の低いモノの光学リリースで、マルチトラックステレオの磁気リリースはわずかでした。