映画サウンドを成功させる方法

映画産業がモノのフォーマットの改善にあまり熱意を示さないことに気付いたドルビーラボラトリーズは、1975年に全く画期的な技術を導入しました。 それは本来ドルビーステレオといわれてきた非常に実用的な35ミリステレオの光学リリースプリントフォーマットです。 従来のモノの光学サウンドトラックに割り当てられた空間に、左右の情報だけでなく第3のセンタースクリーンチャンネル、さらに4番目には周囲の環境音と特殊効果のためのサラウンドチャンネル用の2つのサウンドトラックがあるものです。 しかもこの新しいトラックはモノ再生も可能となっているので、必要となるリリースプリントのタイプは1つで良いことになります。

CP50サウンドプロセッサ CP50サウンドプロセッサにより、映画館用の便利で低コストのドルビーステレオ光学サウンドトラックデコードが実現(1976年)。

この新しい光学フォーマットはマルチチャンネルステレオと高品質サウンドの両方を提供するものです。 当初のモノフォーマットの場合と同様、ドルビーのノイズリダクション技術がヒスノイズや光学ノイズを押さえ、さらにスピーカーのイコライゼーションで映画館のサウンドシステムが新しい広帯域標準特性カーブに調整されるようになりました。

高価な磁気プリントと異なり、ドルビーの光学4チャンネルステレオフォーマットのプリントは、モノのプリントとほぼ同じ価格です。 さらにドルビーの光学フォーマットは比較的単純で、磁気ステレオ再生システムに比べ、装置を設置した後に必要となるメンテナンスは非常にわずかなものとなります。

1987年のドルビーSR採用による大きな特性改善はあったが、ステレオ光学サウンドトラックからの4チャンネルサラウンド音響は現在も映画の標準アナログフォーマット。

ドルビーの映画プログラム

新しいステレオ光学フォーマットの性能は、当初のモノのドルビーフォーマットに比べれば非常に高まりましたが、そう簡単に成功には至りませんでした。 業務用テープ録音のドルビーノイズリダクションは比較的単純な付加技術としてそのままで市場に出すことができますが、ドルビーの新しい映画フォーマット導入には、映画サウンドの録音/製作全体にわたり、すなわち映画産業全体に大きな変更が必要でした。

ドルビーの最終目標は明快で、新しい映画サウンド処理装置を作り、そこから利益を上げるということです。 とはいえこの目標を達成するのは、映画製作者に新しいフォーマットの利点を理解させる必要があります。 サウンドミキサーに最新技術を教えなければなりません。 配給会社には、ステレオフォーマットのリリースプリントがモノ用の映画館でも問題なく上映できることを理解させなければなりません。 映画館装置を供給する会社には、システム要件や設置手順を教える必要がありました。 また新設備への投資が入場料の売上げで回収できることを映画館所有者に納得させなければなりません。 このように、映画産業の種々の分野にて人々の理解を促すために適切な人員を駆使した映画サウンド推進プログラムを進めて行く必要がありました。

こうして進めらることになった国際規模のプログラムは、様々な方面に向けられるものでした。 ドルビーの映画コンサルタントは、ドルビー技術を採用するサウンドトラックでリリースされる様々な映画の製作を支援することになりました(現在このような支援は世界中のあらゆる映画製作所で提供されています)。 ドルビーはまた米国の映画産業をさらに支援するためにニューヨークとロサンゼルスにサポート目的の事務所を設立しました。

ドルビーの映画サウンド装置の設置担当者や技師には定期的な訓練コースを受けさせています。 他のメディアの場合と同じく、ドルビーはドルビーの優れた技術を取り入れたサウンドトラック作成に必要となるエンコード装置の製造を行っています。 これらの装置はそのまま販売されるものではなく、映画会社やスタジオに貸し出されます。 こうした方針、さらにドルビーのコンサルタントによる映画サウンドトラックの品質管理、またエンコード装置と同じ水準で作られているドルビーの映画サウンドプロセッサの採用により、映画館の入り口に示されたドルビーの名にふさわしい高品質の映画が上映されるようになりました。

映画サウンドの分野においてドルビーがこうした地位を確保できたもう1つの要素は、観客の反応を意識するということです。 これは1977年に新しいドルビー技術で作成された2本の大人気映画、「スターウォーズ」と「未知との遭遇」に見られます。 この2つのヒット映画が上映された多くの映画館には、観客も映画産業も気付かずにはいられないようなとても素晴らしい新しいドルビー装置が備わっていたのです。 マーケティング調査を実施したところ、同じ映画を見るなら観客はドルビーステレオフォーマットで上映する映画館を好み、モノで上映するところは避けるという結果が得られました。

当初この新しいドルビー技術を採用したのは大型映画だけでしたが、まもなくあらゆるタイプの映画がステレオの光学サウンドトラックでリリースされるようになりました。 こうして映画鑑賞に大きな変化がもたらされたわけです。 1976年の映画館はほとんど忠実度の低いモノサウンドのもので、マルチチャンネルのハイファイステレオは数少ないものでした。 現在は映画館に行けばいつでもマルチチャンネルステレオサウンドが聴けるでしょう。 これはドルビーラボラトリーズとその映画サウンドプログラムによるものです。

ドルビーサラウンドとホームシアター

ドルビーサラウンドは映画のサウンドトラックと同じように、4チャンネルのサラウンドサウンド作品を2本の音声トラックにエンコード(1982年)。

家庭でのマルチチャンネルサウンドのデコードということを考えて、1982年にドルビーはドルビーサラウンドを発表しました。 これはドルビーの映画サウンドプロジェクトを民生用に広げたものです。 民生用エレクトロニクスメーカーにライセンス許諾が初めて行われたこうした技術は、ホームシステムでサラウンドチャンネルをデコードするものでした。 その次の技術はドルビーサラウンドプロロジックという、センターチャンネルもデコードできるようにするもので、本来映画館での再生用に開発された優れた回路技術が採用されています。

現在世界中で何百万もの人々が使用しているホームシアターは、A/Vレシーバーなどの製品に4チャンネルのドルビーサラウンドプロロジックデコード技術を採用することから始まる(1987年)。

1970年代の4チャンネルサウンドとは異なり、ドルビーサラウンドは急速に市場に受け入れられました。 新しい分野に導入するにあたって、すでに1つの産業、映画産業で複数チャンネル構成およびその理想的な使用法が確立されていたということが1つの理由と考えられます。 またこれははっきりとした目標の下で開発が進められた技術であったからです。 つまり視聴者にとってより良いものを作るということでした。 そしてもう1つの理由は、映画産業および民生用エレクトロニクス産業のソフトとハード標準が1つの組織、つまりドルビーによりはっきりと確立されていたということでした。

家庭でのサラウンドシステムの使用が増えるにつれ、民生用エレクトロニクス産業は家庭用再生システムに新しいカテゴリーが現れてきたことに気付き始めました。 現在"ホームシアター"と呼ばれているものは、たちまち急成長を見せる民生用エレクトロニクスセグメントとなり、この停滞気味の業界に新しい息吹を吹き込むことになりました。 ハードおよび録音や放送メディアに関する品質基準の備わったドルビーサラウンドは、ドルビーノイズリダクション技術と同様、ドルビーラボラトリーズのライセンス許諾プログラムにより提供されています。

現在ドルビーサラウンドでのプログラム作成にはテレビ放送も含まれています。 つまりドルビー技術でエンコードされたサウンドトラックを使う映画だけでなく、ドルビーサラウンドで放送される通常のテレビシリーズ、スペシャル番組、スポーツ番組も含まれます。 この他ドルビーサラウンドはビデオゲームや他のマルチメディア用途にも使われています。

ドルビー映画の場合と同じく、ドルビーサラウンドでエンコードされたものは2チャンネルステレオまたはモノでの再生も可能です。

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