ドルビーメタデータ

ドルビー®オーディオメタデータは、再生機器や環境を問わず、視聴者に最適なオーディオ品質を確保するためのシンプルかつ強力な手段となります。重要な「3つのD」、つまりダイアローグ正規化、ダイナミックレンジ、ダウンミックスを含め、主要な信号パラメーターを制御できます。

メタデータは、データに関するデータです。放送に関してより厳密に言えば、音声信号に付随する記述データです。これにより、視聴者がサラウンド、ステレオ、モノラルのいずれで視聴していても、放送事業者やオペレーターが意図したとおりに再生される音声を伝達可能です。ドルビーオーディオメタデータは、民生用デコーダーまでの最終的な伝送も含め、すべてのダウンストリーム処理に対して主要な番組パラメーターを指定可能で、刺激的でダイナミックなサラウンドサウンドと、より圧縮率の高い一貫した品質のステレオサウンドを、1つのオーディオストリームで配信することができます。

制作またはポストプロダクションの担当者にとって、メタデータは、視聴者がどのような機器を使用していても、意図したとおりに番組を視聴してもらうための手段となります。

伝送用途では、メタデータは、番組パラメーターのモニタリングと品質管理を行い、誤った設定があれば修正することができます。再生に関しては、メタデータは、テレビやセットトップボックス(STB)に対して適切な音量制御に関する指示を出し、ダイナミックレンジモードの設定を可能にし、必要な場合にはダウンミックスのパラメーターを指定します。

ワークフローへのドルビーメタデータの統合

ドルビーデジタルプラスおよびドルビーデジタルによるすべての伝送にはメタデータが含まれます。しかし、メタデータの設定にはいくつかの方法があり、必要な制御の度合いや、伝送する番組のジャンルによって異なります。

最も簡単な方法は、チャンネルの音声仕様に適したメタデータをプリセットの中から1つ選択して、伝送エンコーダーで適用するやり方です。これは、すべての番組が1つのジャンルに属しており、番組が一貫した音量になるよう調整されているなど、オーディオが均質的に準備されている場合には許容できる運用方法です。そうでない場合は、一定の方式で番組毎にメタデータを設定することが推奨されます。これは、ジャンル毎のプリセットを使用することで実現できますが、読み込み時にメタデータを設定してコンテンツとともに伝送するのが理想です。

基本的なワークフロー

基本的なワークフローでは、メタデータは次のように処理されます。

コンテンツの読み込み時にメタデータ設定

サラウンド音声番組コンテンツとともに、インフラストラクチャを通じてメタデータ伝送

最終の伝送ポイントで、送出(または配信)用コーデック用にメタデータをエンコード

民生用のテレビまたはSTB内のデコーダーによりメタデータを抽出

メタデータは、さまざまな方法でオーディオとともに伝送されます。たとえば、独立したデータファイルやシリアルデータストリームである場合や、ドルビーEのようにオーディオと一緒にパッケージ化される場合があります。

ドルビーEでのワークフロー

ドルビーEは、最大8チャンネルの24ビットオーディオとそのメタデータを2チャンネルの放送用インフラストラクチャを通じて伝送できる、業務用オーディオコーディングシステムです。ドルビーEで伝送されるメタデータは、ドルビーデジタルプラスまたはドルビーデジタルと直接連動することができます。

ドルビーEは極めて堅牢であり、伝送チェーンを通じて、可聴な劣化を生じさせることなく何度もエンコードとデコードを行えます。メタデータとオーディオが常に同期を保つように、ドルビーEビットストリームのすべての要素は相互に固定されています。ドルビーEビットストリームはビデオフレームをベースとしており、各フレームに対して完全なメタデータのセットがエンコードされます。

ドルビーEは、HD-SDIに埋め込むことができ、また、BWAV、MXF、MPEG-2のトランスポートストリーム内で伝送できます。

ドルビーメタデータの挿入と伝送に関するドルビーE以外の選択肢

シリアルメタデータ、SMPTE RDD 6、ビデオフレームベース

VANCメタデータ、SMPTE 2020

DMDBチャンク、EBU Tech 3285 Supplement 6、BWAV内に格納

XML

MXF、SMPTE 382、SMPTE 380 DMS-1

トランスポートストリーム、SMPTE 2038、SMPTE RDD-11

ドルビーE以外の選択肢に関する詳細は、「PCMの処理」タブを参照してください。

ドルビーEとドルビーメタデータの対応製品

多数のドルビーのパートナー企業様が、ドルビーEとドルビーメタデータのエンコード、デコード、パススルー、解析を行える機器を提供しています。

主なドルビーメタデータパラメーター

視聴者の再生環境は、サラウンドのホームシアターから、従来のステレオやモノラルのテレビまで、バラエティに富んでいます。ドルビーメタデータは、再生環境に関係なくあらゆる番組に最適なサウンドを提供するように設計された、重要なパラメーターを提供します。

これらパラメーターの主要なものには、「3つのD」と呼ばれる下記のパラメーターがあります。

ダイアローグ正規化

ダイナミックレンジ制御

ダウンミックス

「3つのD」を適切に設定するというシンプルな方法によって、スピーカーのチャンネル数、環境雑音レベル、再生機器の品質に関係なく、最高の品質でサウンドを再生できるようになります。

ダイアローグ正規化

ダイアローグレベルのパラメーターは、ダイアローグ正規化またはdialnormと呼ばれ、音量レベルの正規化値を再生機器のデコーダーに伝達します。dialnormは、番組間やメディア間の音量差解消に役立ちます。

dialnormは、信号のピークではなく、会話(ダイアローグ)部分に基づいて番組の平均音量を測定します。音量値は、(ITU-R BS-1770などのアルゴリズムを使用してdBFSを基準として)測定され、メタデータによって家庭のSTBまたはテレビに直接伝送されます。

dialnormの設定方法は、専用の音量メーターを使用して番組の音量をモニタリングし、その音量レベルをメタデータストリーム内に挿入するというものです。あるいは、メーター上で目標音量レベルを達成するように番組をミックスすることもできます。

ダイナミックレンジ制御

ダイナミックレンジ制御(ダイナミックレンジ圧縮(DRC)または「ミッドナイトモード」などとも呼ばれる)により、視聴者はダイナミックレンジを狭めた状態で視聴できるようになります。つまり、視聴者は、隣人や家族に気兼ねせずにテレビを見ることができます(この制御は民生用機器ではオプションとして提供されます)。

ダイナミックレンジ制御では、番組の中の音量が比較的小さい部分のレベルが上がる一方で、音が大きい部分のレベルが下がります。視聴者は、音量ボタンを調整しなくても、すべてのサウンドを聴き取ることができます。

ドルビーメタデータでのダイナミックレンジ制御では、RFモードとラインモードの2つのモードが用意されています。

RFモード:

従来のアナログ放送音声と同程度のダイナミックレンジ

デジタルTVのMPEGステレオ音声と同程度のダイナミックレンジ

音声を11 dB増幅させるレベルシフトを含む

ラインモード:

より低いダイナミックレンジ圧縮率

音声レベルが低い部分のブースト量と、高い部分のカット量を調整可能

ダイナミックレンジ値を設定する前に、適切なdialnorm値を選択する必要があります。次に、ダイナミックレンジのプリセットを選択する前に、ソースミックスをプレビューします。

ダウンミックス

ダウンミックスは、マルチチャンネル(5.1チャンネルなど)の番組を、より少ないスピーカー数で再生できるようにする、ドルビーデジタルプラス(およびドルビーデジタル)の機能です。視聴者は、5.1チャンネルシステムを用意しなくてもデジタルTV放送を楽しめます。

ダウンミックスのパラメーターを使用すると、ステレオ出力にサラウンドチャンネルとセンターチャンネルをミックスする際の音量レベルを調整できます。サラウンドサウンドをステレオで効果的に再生するうえで、高い柔軟性が得られます。

ステレオ出力には2種類あります。

ドルビープロロジック®デコード処理に適したステレオ互換のLt/Rtダウンミックス

通常のステレオまたはヘッドフォン再生用のシンプルなLo/Roダウンミックス

特定のパラメーターを使用することで、どちらのステレオ出力をデフォルト設定とするかを選択できます。その他の個別のパラメーターでは、Lo/RoおよびLt/Rtのダウンミックス状態を調整できます。

プリセットの使用

メタデータは個別の番組に合わせて設定できます。また、ドルビーでは、さまざまな番組ジャンル毎に最適なプリセットを用意しています。どのプリセットを使用するかについては、十分に検討することが重要です。

メタデータを選択する際、別途注意すべき事項に、ダウンストリームのオペレーターが設定する配信仕様があります。場合によっては、特定のプリセットが要求されることがあります。

一般的なプリセットに関しては、「設定」タブの表を参照してください。

機器

ドルビーでは、メタデータの設定を支援するいくつかのソリューションを提供しています。

ファイルベースの自動処理向けのソリューション:

ドルビーDP600プログラムオプティマイザー

ドルビーメディアエミュレーター

リアルタイムのメタデータ生成とエミュレーション向けのソリューション:

DP570マルチチャンネルオーディオツール

ドルビーメディアエミュレーター

ドルビーのパートナー企業様からも幅広いハードウェアとソフトウェアが提供されています。

支援

ドルビーでは幅広いトレーニングリソースを提供しています。詳細については、ドルビーの担当者にお問い合わせください。また、トレーニングから包括的な業務請負まであらゆるサービスを提供できる、総合サービスコンサルタントのネットワークもあります。さらに、メタデータ伝送に関するアドバイスや製品に関して、ドルビーのパートナー企業様にお問い合わせいただくことも可能です。

今日の放送環境においては、ドルビーEを使用していない設備でも、PCMとともにドルビーメタデータを使用するうえでの障害はほとんどありません。業務用の環境で使用されるどのメタデータフォーマットでも、視聴者の家庭における最適なオーディオ制御を同じレベルで達成できます。また、すべての方法は標準化されており、同等のドルビーEシステムと同じ動作が提供されます。

ワークフローに関する考慮事項:チャンネルの追加、メタデータの統合

多くの業務システムは、マルチチャンネルのPCMオーディオとメタデータを処理できる機能をすでに備えています。ステレオPCMからの移行は、オーディオとともにメタデータを伝送するオプションが多数用意されていることから、非常に簡単に行えます。マルチチャンネル音声追加のために、従来のSDサービス用のステレオ音声を廃止することは、必ずしも必要ではありません。実際に、16チャンネルに対応したHD-SDI信号では、多言語や音声解説サービスなど、さまざまな組み合わせのオーディオチャンネルを扱うことができます。

ファイルコンテナの処理:柔軟性、速度、パートナーサポート

HD放送では多くの場合、業務用ヘッドエンドにおいて、より効率的なワークフローが採用されています。これにより、容量が増加し速度が向上するため、マルチチャンネルPCMオーディオを完全にサポート可能です。MXF、BWAV、XMLはすべて、ワークフローにメリットをもたらすものであり、NLEステーションや伝送エンコード処理など、特定の用途に適した方法でメタデータを処理できるようになります。

HD-SDIの処理:考慮事項とベストプラクティス

たとえばチャンネル間のタイミング関係やA/V同期など、ステレオ放送に適用されるのと同じベストプラクティスがマルチチャンネル放送にも適用されます。現在の業務用モニタリングユニットの多くは、これらの分析機能を備えています。さらに、現在のHD-SDI埋め込みユニット、埋め込み解除ユニット、その他の処理ユニットは、埋め込まれたPCMオーディオを処理、またはそのままパススルー可能です。

関連規格

関連規格の最新情報については下記サイトを参照してください。

SMPTE

EBU

コンテンツの種類に応じたドルビーメタデータの設定例については下表を参照してください。

拡張ビットストリーム情報はイタリック体で表記されています。

パラメーター

映画制作

ドラマ

ドキュメンタリー

音楽

スポーツ中継

Dialogue level

–27

–23

–23

–23

–23

Channel mode

3/2

3/2

3/2

3/2

3/2

LFE channel

Enable

Enable

Enable

Enable

Enable

Bitstream mode

Main Complete

Main Complete

Main Complete

Main Complete

Main Complete

Line mode pro

Film Standard

Film Light

Film Light

Music Light

Film Light

RF mode pro

Film Standard

Film Light

Film Light

Music Light

Film Light

RF overmodulation protection

Disable

Disable

Disable

Disable

Disable

Center downmix level

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

Surround downmix level

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

Dolby Surround mode

使用不可

使用不可

使用不可

使用不可

使用不可

Audio production information

Yes

Yes

Yes

Yes

Yes

Mix level

105 dB

85 dB

85 dB

95 dB

85 dB

Room type

Large

Small

Small

Small

Small

Copyright

Yes

Yes

Yes

Yes

Yes

Original bitstream

Yes

Yes

Yes

Yes

Yes

Preferred
stereo
downmix 

Lt/Rt

Lo/Ro

Lo/Ro

Lo/Ro

Lo/Ro

Lt/Rt center downmix level

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB) 

0.707
(–3 dB) 

0.707
(–3 dB) 

Lt/Rt surround downmix level

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

Lo/Ro center downmix level

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

Lo/Ro surround downmix level

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

0.707
(–3 dB)

Dolby Surround EX mode

Not Indicated
(指定なし)

Not Indicated
(指定なし)

Not
Indicated
(指定なし)

Not Indicated
(指定なし)

Not Surround EX

A/D converter type

Standard

Standard

Standard

Standard

Standard

DC filter

Enable

Enable

Enable

Enable

Enable

Lowpass filter

Enable

Enable

Enable

Enable

Enable

LFE lowpass filter

Enable

Enable

Enable

Enable

Enable

Surround 3 dB attenuation

Enable

Disable

Disable

Disable

Disable

Surround phase shift

Enable

Enable

Enable

Disable

Enable


 
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